ニーハオTaiwan

台湾現地妻による台湾情報ブログ

2人の子供を台湾で出産した現地妻が語る台湾の産後ケア事情

今日は台湾の産後事情のご紹介です。私は子供二人を台湾で出産しました。ですから正直なところ日本での産後ケア事情は分かりません。その家庭の事情によって産後の過ごし方は変わってくると思います。私は「これが正しい」「こうあるべき」ということを言いたいのではありません。ただ、これから台湾で出産しようか、日本で出産しようかと考えたり、産後の過ごし方について知りたいという方の参考になればと思い、私が経験した台湾での産後ケア事情についてご紹介したいと思います。

 

 台湾の産後ケアについて

f:id:UB610:20190530160914j:plain

「育休」はない台湾の現状

台湾では共働き家庭が多いです。また転職する人や中途採用も豊富なので、「産休」をとれても「育休」というのは取りにくい現状があります。「育休」の働かない期間の給料が支払うくらいなら、辞めてもらって新しい人を雇う方が経営者にとっては利益があるからです。この辺は日本よりかなりシビアです。では、仕事を継続することを希望する人は産後どうするかというと、出産ぎりぎりまで働いて、産後1~2か月で仕事復帰します。その期間は経営者と相談になります。

 

出産後1~2か月で仕事復帰するためにする「坐月子」

f:id:UB610:20190530160901j:plain

出産後1か月で仕事に復帰するために産後は栄養価が高いものを取り、徹底的に体を休めます。これを「坐月子(Zuò yuè zi)」といいます。仕事復帰をしない場合でも産後は「坐月子」をするのが中華圏では当たり前です。出産のダメージを負った体を癒すことは女性のからだにとってとても重要で、次の子の出産時や更年期に差が出てくるといわれています。

 

 「坐月子」とは

f:id:UB610:20190530160929j:plain

産後ケア「坐月子」の期間

日本では一般的に産後に床に臥す期間は21日と言われていると思います。3週間目に「床上げ」をするということをよく目にします。台湾の「坐月子」期間は一般的には1か月です。しかし、最近は一か月でも短く、出産で負った身体への負担を回復させるには6~8週が適度だといわれています。

「坐月子」の期間は冷たいものを食べない

f:id:UB610:20190530160837p:plain

日本では生理期間や産後の食事の禁忌はないと思います。でも、台湾では生理や妊娠期間、産後は氷や冷たい飲み物など基本的に冷たいものをとりません。理由は体を冷やしすぎないためです。常温や温かいものを飲むようにします。

 (写真は長男を出産した時のある時のおやつです。スープがいっぱい)

「坐月子」の期間は過労やクーラーの当たりすぎに注意

「坐月子」の期間はとにかく体を休めることに集中します。ですから長い時間たっていたり、疲れすぎるのはご法度です。台湾は暑いですが、なるべくクーラーの風に直接当たらないように注意します。

 

「坐月子」の期間の食事は禁忌がいっぱい

「坐月子」の期間の食事は東洋医学の食材の分類に基づいて、ニンジン、キャベツ、ホウレンソウ、空心菜など「暖かいもの」に属したものを多くとります。「冷たい食べ物」に属している苦瓜、レンコン、トウガン、キュウリ、綠豆、だいこん、へちま等やスイカ、メロンなどの瓜類も避けます。そんなわけで「坐月子」の期間には食べていいもの、食べてダメなものが発生します。

 

「坐月子」の期間の食事は塩分控えめ、油少なめ、砂糖少なめ

「坐月子」の期間辛いものや塩辛いものなど刺激物はとりません。なるべく体に良いものを取り、しょうがやニンニクを多用して、調味料は控えめです。漢方薬入りのスープやレバーやハツなど鉄分豊富な食材を多く摂取するように言われます。

 

「坐月子」の期間の禁止事項とされていること

義家族が古い考えの人だともしかしたら、「水を飲んではいけない」「頭を洗ってはいけない」「クーラーにあたってはいけない」などと言われるかもしれません。これは私の勝手な推測ですが、家電製品が発達していない時代は髪を洗って風邪をひいたり、不衛生な水でおなかを壊したりという時代があったからこのような禁忌が出来たのだと思います。現代では、髪を洗わない方が不衛生ですし、ドライヤーですぐ乾かすこともできます。クーラーにあたらずに熱中症になることの方が問題です。このような禁忌はひと昔前のことなので、何か言われても気にしないようしたほうがいいです。

 

乳腺炎などのトラブルの場合は病院に行く

後でご紹介しますが、「坐月子中心」という「産後ケアセンター」に入る場合には傷口の観察や母乳の管理はケアセンターの看護師さんがフォローしてくれます。ですが、自宅で過ごす場合には自己管理が必要です。日本のような行政の保健師さん訪問や助産院はないので、産後の感染、乳腺炎、膀胱炎など問題があれば病院を自分で受診しなければなりません。

 

 

台湾人の産後の過ごし方

f:id:UB610:20190530160905j:plain

台湾の病院では自然分娩の場合には産後3日程度、帝王切開の場合には5日程度で退院が一般的です。では台湾では産後どのように過ごすかご紹介します。

1、産後ケアセンター

台湾では退院後「坐月子中心」という産後ケアセンターに行く人が多いと思います。病院に併設されていたり、街中にも施設がたくさんあります。産後ケアセンターは、個室のホテルのような部屋で、赤ちゃんは病院の新生児室のような施設で看護師さんが24時間ケアしてくれます。もちろん希望すれば同室も可能ですが、お母さんがゆっくり体を休めるための施設なので、同室を強要されるようなことはありません。3食「坐月子」の食事+おやつが出され、運動ができるような施設があるところもあります。感染防止のため面会が制限されているので、夫は同室に泊まることができますが、義家族や友達はロビーまでの面会に制限されていることがほとんどです。看護付きのホテルステイと考えて下さい。ただし、料金が安くありません。台北市内だと6,000元/日~だと思います。ちなみに私が入ったところは8000元/日でした。「~」としたのは立地や環境でかなり価格が変わるからです。

f:id:UB610:20190530160850p:plain

f:id:UB610:20190530160758p:plain

「坐月子中心」のある日の朝食と夕食です。かなりのボリューム。

 

2、産後専属のヘルパーさんを頼む

直接家に帰る場合には産後専門のお手伝いさんに来てもらうという手もあります。これは「月嫂」「月子媽媽」と言われる方々で、直接家に来てくれ、ご飯の準備、赤ちゃんのお世話、簡単な掃除、ママの健康管理などをしてくれる方々です。その方やママの希望により、「9時から18時」などの時間制の方や、24時間泊まり込みという方もいます。交渉次第では海外出張も可能な方もいます。

私は2人目の出産のときは上の子が寂しがるとかわいそうだったので、この産後ヘルパーさんをお願いしました。事前面接もあり、感じのいいおばさんが手伝ってくれ、乳腺炎になりかけたときはマッサージもしてくれて大変助かりました。

 

3、「月子食」を頼む

自宅で過ごす場合にネックになるのは食事だと思います。ご紹介した通り、食べてはいけないものなどたくさんあるので、結構面倒です。台湾では「月子食」を毎日宅配してくれる業者もたくさんあります。自宅で赤ちゃんの世話をゆっくりして、食事だけ注文するというのも手です。

 

4、家族の力を借りる

これは日本と一緒ですね。義家族のもとで過ごす人、自分の実家に帰る人。

しかし、台湾で日本人が出産し実母に手伝ってもらうとなると台湾になれていない親を呼び寄せることになってしまいます。親に負担を強いることになるのでそこは自分の親と相談です。私の場合には上の子の出産時は親が来てくれました。言語的な問題というより暑さにやられ、かなり迷惑をかけてしまったと思っています。

 

5、ナニーさんを雇う

台湾には「外労」と呼ばれる東南アジア出身の労働者がたくさんいます。その方々を住み込みで雇って育児を手伝ってもらうことは珍しくありません。

 

台湾で出産した私が考える台湾で産後を過ごすメリットとデメリット

メリット

・夫が常にそばにいる

これはその後の結婚生活や育児において結構重要だと私は思っています。

・かなりいたわってもらえる

産後に休息をとることはかなり重要視されているので、無理やり家事を強要されたりすることはなく、ゆっくり体を休めることはできます。とくに産後ケアセンターは快適です。

・「月子食」は本当に体にいい気がする

身体を温めて、栄養があるものをとれるので、口に合うのであれば「月子食」はおすすめです。

 

デメリット

 ・食事についてうるさく言われる(かもしれません)

産後の「坐月子」は結構重要視されるので(するのとしないのでは更年期障害の重さが違うらしいです)、スイカをたべたりアイスを食べてたりすると注意されたりして煩わしく思うことがあるかもしれません。これは各家庭の状況によるのでなんともいえません。

・「月子食」に慣れないかもしれない

貧血改善の内臓系や漢方を多用するので、普段から台湾の食事が合わないと感じている方にとっては苦行になる可能性があります。私は内臓系は平気ですが、上の写真にあるような漢方のスープは苦手だったので薬だと思って一気飲みしてました。

・産後のママのケアが薄い

助産師さん外来や母乳外来みたいなものがないので、例えば乳腺炎になったときは病院に行くしかなく、抗生剤を処方されます。ですが、それは熱は下がりますが、根本的な解決にはなりません。詰まっている乳腺をなんとかしたいと思ったときに相談できる人が台湾には今はいませんでした。二人目の出産のときは「月嫂」がいたのでマッサージを手伝ってもらいましたが、1人目の時は必死でネットで探して、マッサージの人に来てもらいました。彼女はいい人でしたが、実は無資格なので(なにか被害があったとかではなく、台湾にそのような資格がないことが問題)母乳関係で困ったときの相談機関が日本より手薄だと感じました。

このような出産本を参考に過ごしました。

・自分の家族に迷惑をかける可能性がある

上にも書きましたが、産後実母が台湾に来てくれて家事や育児を手伝ってくれました。慣れない台湾で買い物や炊事をしてくれ本当に感謝しかありません。台湾で出産し、自分の家族に手伝ってほしいと考えるとき、自分の家族には負担がかかってしまうかもしれません。

・義家族にもやもやするかもしれない

これは日本にいても同じかと思いますが、産後は予想以上に気持ちが不安定になったりします。そこにきて言葉の壁、習慣の違いがある場合に義家族との関係がぎくしゃくしてしまうことがあるかもしれません。

 

まとめ

デメリットをたくさん書いてしまいましたが、人によってそれぞれだと思うので、参考程度に読んでください。私は産後にしっかりと体を休めることができ、主人も新生児の頃から子供と一緒にいられたので、いろんなイライラや落ち込むこともありましたが、台湾で産んでよかったと思っています。

日本ではもう少し「産後の食事」に気を配ってもいいのではないかと個人的には感じています。